アーカイブ1・ゲスト(2019年5月〜)

*5月のゲスト

自作の絵画、アート、詩、言葉の関係について
                                 清水研介

私(清水研介)はアーティストとして、絵画の制作、詩(ヴィジュアル詩を含む)の制作、音楽の制作など、幅広く創作をしている。この中で、自作の絵と言葉についての関係については、自分の人生でのいろいろな出来事が影響をしている。それらの出来事について、まず、振り返ってみようと思う。

私の場合、元々は、子供の頃や10代の頃は、美術と音楽を比べるならば、強いてどちらかというと音楽の方に興味を持っていた。高校生の時、‪一時‬期、音楽大学へ進むことを目指そうかという気持ちを持ったこともあった。ただ、かと言って美術に興味がなかった訳ではない。小さい頃から美術館、博物館、展覧会を訪れたりしていて、美術も好きだった。

美術を制作することに関心を持つようになったのは、17歳の頃、大学受験の勉強や日々の生活にストレスを感じていたのだろうか、時々、ノートに文字をデザインのような感覚で書くようになった。文字をただ普通に書くのではなく、文字を造形的に面白いように書く、線描きをするのが楽しいと思うようになった。おそらくこの辺りから美術制作の方への興味が増していったと思う。その初めの頃から、「文字と線」は私の中でとても大事な要素だった。

その後、私が18歳の頃だったと思うが、ギヨーム・アポリネール(Guillaume Apollinaire)の詩を知った。そして、アポリネールの影響で、「言葉の配置を面白くすることで、絵を描く」ということの面白さを再認識した。

同じ頃、18歳、19歳の頃、ジュール・シュペルヴィエル(Jules Supervielle)の短編「L'Enfant de la haute mer」を読み、衝撃を感じた。この経験については、今まで、自分のホームページなどでも少し書いた。自分にとっては、この作品は、夢の中の話のようで、また、シュールレアリスムの夢想的幻想的絵画を見ているかのように感じられた。この作品を読んでから、自分は、ビジュアルアートと文章が内部に共に存在し、それらが触れ合っているかのような、クリエーティブな作品を創作していく、という意識を持つようになった。

その後、1997年(23歳の頃)から1999年まで、アメリカのミネソタ大学(University of Minnesota)で勉強をした。この時、日々の生活の中で、アメリカの詩を読んだ。ミネソタでの生活は良い経験になったと思うし、今もミネソタは大好きだが、当時の自分自身は精神的に苦しく、その状態を癒すかのように、短編や詩を創作するようになった。短編は日本語で、詩は英語で、という感じだった。英語での詩を書く時は、文字の配置を面白くして、ビジュアル的にも面白く見えるような、そういう詩を書いたりしていた。この感覚は、アポリネールの詩が大きく影響していたと思う。

現在(2019年4月)、ヴィジュアル詩を制作する時は、文字の配置で絵を描くという感じで制作することが多いと思う。また、言葉が持っている「意味」も大事に思う。つまり、ヴィジュアル詩の中で言葉を書く、そうすると、その言葉に意味があり、見た人は、その言葉の意味を頭でイメージするということが起こり得る。そういった「言葉の持つ意味」、それから、「言葉の持つ造形」、これらを組み合わせる。

私の場合、ヴィジュアル詩を創作する時、使う文字は、英語、フランス語、イタリア語が多い。日本語も使うことはあるが、あまり多く使っていないように思う。一方で、短編を書く時は、日本語を使っている。どうしてこのようになっているのかと聞かれると、理由はうまく説明できない。ただ、自分の制作においては、そうするのが自然に思われる。詩の中で使う言語については、各々の詩人が自分で決めればよいことだと思う。

自分のヴィジュアル詩の制作において、大事な展示の機会として、パリのGalerie Satelliteで開かれる「ヴィジュアル・ポエジィ・パリ展」がある。第10回(2011年)、第11回(2013年)、第12回(2015年)、第13回(2018年)に参加した。この展覧会は、自分のヴィジュアル詩を自分なりに発展していく上で、大きな経験となっている。次回も参加できたら嬉しく思う。

ここで短編について触れようと思う。自分の頭の中では、画像、言葉、音楽などが混ざっている。短編を書く時は日本語で書いている。短編創作では、頭の中で映画のようなイメージを浮かべて、それを書く。その映画のイメージは、実際に経験したこと、自分が見たこと、などがもとになっていることがよくある。

絵画の中に文字を描く時はどうしているか。絵画と言っても、ヴィジュアル詩のように文字が中心の作品ではない場合のことである。私の絵画には、文字があるもの、文字がないもの、両方ある。そのうち、文字を作品の一部に描いているものは、まず、作品の文字以外の部分をほとんど描いた後で、「ここに文字を描いたら面白いかな」と思って文字を描く。その場合、文字の持つ造形的な要素を考えたり、文字や文章を描いてストーリー性を加えるといったことがある。

また、文章を描くことによって、絵に「動きを加える」という意識を強く持っている。どういうことかと言うと、文章を読もうとすると、描かれている言葉を追っていく、そして、そういう言葉を画面のさまざまな箇所に描くと、何か動きを感じる。こういう感覚を持って制作する。「動き」をもたらす要素として、文字や言葉を使っている。言葉ではないが、これに似たこととして、私が自転車を絵に描く時も、「動きをもたらすこと」を意識している。

絵に文字が描かれていないものでも、文学的な要素を絵に入れたいという思いが強い。私の場合、自作の絵で文字が描かれていないものについても、「ストーリーの一場面」を描くという意識がある。従って、私の感覚としては、文字が描かれていなくても、私が考える文学的な要素というものを作品に入れているという意識がある。

では、自作の音楽と言葉については、どうだろうか。私の音楽の制作では、YouTubeにKensuke Shimizuの名前で、自分が作曲したもの、あるいは、編曲したもの、をアップしている。今のところ、ピアノ曲の制作が多いが、二作、自作の詩を歌うという動画もアップしている。「Hotel」という曲と「Morning Dream」という曲だ。これらの動画では、詩を音声だけではなく、視覚的に文字でも伝わるようにしたかったので、詩の文字を画面に表示した。自分の詩人という意識がそうさせたのかもしれない。また、自作の絵の画像もいくつか動画の中に入れた。動画では、音楽、絵、詩など、いろいろなアートの表現を入れることができ、また、動画編集ソフトで画像等も変えることができる。

私が制作する動画は、今の時点では、大きく分けて3種類ある。音楽の演奏の様子の動画、音楽に美術等を組み合わせた動画、音楽の動画ではなく何かを動画で話しているもの。これらのうち、現時点では、音楽の演奏の様子の動画が多いが、音楽に美術等を組み合わせた動画も今後は多く作っていけたら、と思う。

あるいは、もしかしたら全く別の種類の動画も作るかもしれない。私は、「自分がこういう表現もできるなあ」と新たなアイディアや表現方法の可能性を感じたら、それをやってみることがある。そういう自分の性格から想像すれば、今までやってきたアート表現とは違う表現をするようになったり、自分のアートが今後も変わっていくと考える方が自然だと思う。

私の場合、美術、文学、音楽、動画など、どういうアートにしても、その時の自分がどういう心境なのか、どういう状況なのか等によって、作品も変わる。少なくとも自分はそう認識している。その時の自分に合った表現、その時の自分だからできる表現、そういうアートを制作していきたいし、「自分のアートは変わっていく方が自然なんだろうなあ」と思っている。これはあくまで「私の場合」の話であり、私とは違って、「同じようなアート作品」を作り続けることに喜びを感じる人もいると思う。人それぞれいろいろあって良いと思う。

言葉をどう自分のアートの表現で使っていくのかについても、今後変わっていく部分があると思っている。


清水研介(Kensuke Shimizu)
プロフィール:
アーティスト。1974年、東京生まれ。2002年から現在、フィンランド在住。フィレンツェの「フローレンスビエンナーレ」で2007年に作品展示。「ユーモアと風刺国際ビエンナーレ・ガブロボ」(ブルガリア)に2009年から3回連続で入選。個展は、パリのGalerie Satellite(4回)、フィンランド(6回)、日本(5回)、バルセロナ(1回)、ローマ(1回)、エストニア(1回)で。グループ展参加は、パリ、バルセロナ、ウィーン、ニューヨーク、ラスベガス、モナコ、フィレンツェ、ヴェネツィア、トルコ、韓国、中国、日本などで。短編集2冊、英語詩1冊刊行。YouTubeでは、Kensuke Shimizuのチャンネルで音楽の動画をアップ。そのうち詩も使った動画は、「Morning Dream」、「Hotel」。

今後の予定:
‪2019年5月18日から5月31日まで、パリのGalerie Satelliteで個展の予定。日本では、2019年9月27日から10月5日まで、東京都美術館の2階の第4展示室で開かれる「第45回 AJAC展」で作品が展示される予定。‬

清水研介について:

YouTube(Kensuke Shimizuのチャンネル):
https://www.youtube.com/channel/UCPpamaTJTYs_MVwt3hV1qHQ

ホームページ:
http://www.kensuke-shimizu-art.com

Facebook:
https://www.facebook.com/KensukeShimizuArtist/

Instagramのアカウント:
kensukebirdshimizu







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